窓辺と扉の前という距離を保ったまま、
「ふん、……早く出ていきなさいよね」
『あら、この子が心配?』
 くすぐるような喋りかたのロザリーに、フィアは苛立ちを隠さずいい返した。
「正しい持ち主に返せっていってるの。ふつーのコトだよ」
『……ふうん?』
 ロザリーは、はぐらかすように曖昧な声をだす。
 そこには、なにかを企んでいる悪戯っぽい響きが宿っていた。ロザリーは、ゆっくりと
続く言葉を口にした。
『曲がったことはキライなのね、…………〃お嬢さま〃?』
「ッ! ……どうして?」
『くすくすくす』
 ロザリーは、さも楽しそうに愛らしい笑みをこぼし、胸に両手をあてフィアを見た。
『フフ、いま、わたしはこの子と一体になってるのよ? どんなことだって、知ることが
できるわ。でも……、変なの。あなた、お金持ちの家の娘のなのに、わざわざ家を出てこ
の子とふたり暮らししてるの? もったいない』
「ほっといてよ、大きなお世話。……それより、勝手にひとの心を覗くな、バカ」
『こわーい。ちっとも〃お嬢さま〃って感じじゃないのね』
「あなたには関係ないでしょ。それから、その呼びかたヤメて。嫌いなんだから」
『あら、どうして? 素敵じゃない。この子も、心の中じゃいつもあなたのことを……』
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