「…………がっ、……がびーん」
 掌中にある作りかけの造花に目を落として、地上に派遣された天使ステファ=ランクレ
ーは苦々しく呟く。その声に反応して一斉にいくつもの眼差しが向けられ、ステファは殺
人光線でも食らったみたいに「ひええっ」と悲鳴をあげた。
「そこ所長! がびーん、とかいってないで、手ェ動かす!」
「あ、イタ! もうっ、フィア!?」
 隣に座ったフィアから額にデコピンを受け、ステファは涙目になった。しかし、同じよ
うに段ボール箱を囲んで座るサーリアからも、アルテからも、慰めの言葉はかけられない。
ふたりそろって、そっとため息をこぼすのみだ。
 探偵事務所兼ステファの住居である屋敷の二階、通称〃作業部屋〃。
 カーテンを開け放った窓からは陽光が差しこみ、室内に舞う細かなホコリを照らしだし
ている。
「だ……、だってだって、わたしたち探偵なんだよっ?」
 むすっ、と頬をふくらませ、ステファは腕をふって抗議した。
「それなのに、なんで揃って造花作りなんて……っ」
「――――いま、『なんで』といいましたか?」
 横ざまから絶対零度の声音で問うたのは、できたばかりの一輪の造花を暗殺針のように
構えたアルテだ。
 
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