「だいたい、あんたねー!!」×10
『なんなんですかぁー!!』×10
 がるるるる、と猛獣じみた迫力を見せるフィアに、サーリアは臆することなく怒鳴り返
す。すべては『伝説のパン』を手にいれるため。……ムカつく! とフィアは思う。戦闘
に関する基本性能では圧倒的に勝っている彼女だが、なにせ相手は小柄な猫だ。それが目
まぐるしく飛び回るのだから、なかなか捉えられずにいた。
 フィアは、ぶちきれたようにガオーッと吠えて、
「昨日、戸棚にしまってたクッキー、あたしの分まで食べたでしょ!!」×10
『な、なななな、なんでそれを!』×10
「わからいでか! ほんと、食べもののこととなると卑しいんだからっ」×10
『うううう……』×10
 十人のフィアに責められる十匹の猫サーリアは、たちまち苦悶の表情を浮かべる。
「それに!」
 勝負の流れが自分にあることを悟ったフィアは、一気に責めたてた。
「今週のトイレ掃除、サーリアの番なのすっかり忘れてる!」×10
『……あっ! そ、そうでした、ごめんなさいですぅ〜……』×10
 サーリアはHP(?)を半分ほど削られた。分身の数が七体に減る。『で、でも!』と、
サーリアは、ここが踏んばりどころだと、肝を据えて反論する。……なんとも珍しい光景
であった。
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