――小さな気のゆらぎさえ見逃してくれまい。
そう確信するアルテは、最大限に油断なく相手を警戒しながら、推論する。
相手がなにを獲物として使うのか、まずそれが不明だ。武具をかまえているようには感
じられないから、格闘術の使い手なのか……? いや、どこかに隠し武器を仕込んでいる
可能性もある。
そもそも、どれほどの実力者なのかが読めない。
気配の鋭さから、手練れであることは確実のはずだが――。
もっともシンプルで、もっとも重要な部分。
はたして、自分と相手どちらが強いのか?
(先手を打つべきか、否か。それが問題ですね)
慎重に相手の気を探るが、半歩踏みだしたあとはそこから進む様子がない。けれど、そ
れは動くに動けないというジレンマを抱えたアルテと違い、どこか、この対局を楽しんで
いるような空気があった。アルテを圧倒する気の鋭さは保ったままで。
〃覆面の者〃は、こういった。伝説をいただきにきた、と。
それが、ラスティが持ってきた『伝説のパン』であることは明らかだろう。
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