【正面玄関前/16:40】 

「ちょっ!? アルテさん……!?」

 フィアは、足音も荒々しく玄関前に倒れているアルテに駈けよった。
 彼女のたおやかな体のすぐ脇に、刃を剥きだしにした仕込み杖が転がっていた。

「これ、って、まさか……」

 その意味を考え、フィアは戦慄する。
 それなりに屋敷全体に意識は払っていたつもりだが、まるで物音は聞こえなかった。
 状況をみれば交戦があったことは、ほぼ間違いないだろう。
 アルテほどの手練れ――、単純な戦闘技術だけでいえば、アルテは『ランクレー探偵事
務所』中でも最強だ。その彼女が、おそらくは一撃で倒された。外傷も残さないほどの見
事な一撃で。
 アルテのそばに膝をつき彼女の上半身を抱き起こしながら、やったのは誰だ? とフィ
アは考える。

(……ステファ所長……?)

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