それは、ひときわ大きな爆音と、震動だった。
 屋敷全体を、津波に飲まれたような縦揺れが襲った。当然、サーリアは階段から投げだ
され、手すりから手も引き剥がされて宙に舞い、また一階の玄関広間に墜落した。しこた
ま、尻餅をついた。
「……ふみゃあっっ!!」
 さらに、吹き抜けの天井に掛かっているシャンデリアが落下してくる。
 サーリアは寸でのところで回避。がしゃんっ、とガラス細工の砕けちる、硬質な音が響
いた。同時に、右手の居間へと通じている扉が開き、見慣れた人影が飛びだしてくる。頭
が寝癖でボサボサだった。サーリアと同じように、誰かにのされて、倒れていたのだろう
か。紅い髪の、探偵事務所所長、ステファだった。
「さ、サーリア!? いまのなにっ?」
「し、しらないですぅ。でも、たぶん、キッチンのほうから〜……」
「キッチン……? ああっ、伝説の! こうしちゃいられないわ!」
 なにが、〃こうしちゃいられない〃なのかわからないが、ステファは、むんっ、と芝居
くさい仕草で腕まくりをした。そのまま、居間の扉の向かいにある、食堂の扉へと駈ける。
キッチンへは、食堂から行けるのだ。
 あわててサーリアも、ステファに付き従い食堂へと向かう。
 扉が開く前から、嫌な予感がしていた。それは、ステファも同じだったのだろうか。
 わずかにためらうような表情を見せたあと、思いきって、食堂の扉を開いた。
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