サーリアは腕を組み、居間をぐるぐると歩き回り、やがて暖炉の前で立ちどまって、
「うん、ここはサーリアの知ってる事務所じゃないです」
 と、きっぱり結論づけた。
 もちろん理由はある。サーリアもときには推理を働かせる。
「……どうしてかというと、それは……、だって、この部屋にあるものはみんな、まだ新
しいですぅ。……で、ええーっと、ほんとの事務所にあるヤツは、もっと古ぼけてますか
らぁ――」
 ばんっ。そこまで呟いたとき、まるで蹴り破るような勢いで扉が開いた。
「っっっ!?」死ぬほど驚くサーリア。

 ――入ってきたのは腰まで届く金髪もまぶしいひとりの少女と、
 細い眼鏡の似あう物腰の穏やかそうな、ひとりの青年だった。

 ふたりは、なぜかサーリアが透明人間であるかのように、近くにいても気づかない。
(だ、だ、誰ですぅ……!? こっ、このひとたちは――っっ?)
 声を上げそうになるのを必死に堪えサーリアは内心でわめいた。
「ほらこうして、証拠もそろってる! どういいわけする気だい、ロザリー!」
「待って! ハミル、話を聞いて! わたし、なんのことだかわからないわ!」
 ハミルと呼ばれた青年は、手に持っていた書類や写真をテーブルに叩きつけた。
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