アルテは、遠い東方の異国の酒をとくに好んでいた。顔が赤くなったりは一切せず、常
に目を閉じているため表情もほとんど変わらず、しかし身にまとう空気だけは、はっきり
と変化させてアルテはごきげんだ。
「さあ、飲みましょう? 所長。くいーっと」
「あ、えとえと。いただいてるから、ねっ?」
 蜘蛛の糸のようなアルテの〃気〃に囚われ――これもまた、セーマ流居合剣舞の技のひ
とつ〃縛気牢獄〃である――、彼女のそばから離れられずにいた。幸いなことに、今夜の
ターゲットから外れたフィアとサーリアは、向かいのソファーに並んでちびちびと薄めた
ブランデーを舐めている。
「はーっ、いつもながらすごいねー、アルテさん」
「底なしですぅ」
 呆れたように感心したようにいうサーリアは、ぴったりとフィアに寄りそい二の腕同士
をくっつけている。普段であれば、暑苦しいから離れろ、と叱るフィアだが、さすがに今
夜は好きにさせていた。
 この夜が一番ハードだったのは、間違いなくサーリアだったから。
「――――ふッ」
 鋭い呼気とともに、アルテがステファをソファーに押し倒した。いよいよ、佳境だ。
「ままま、待ってよぉ、アルテ! どんとすとっぷ!」
 テンパったあまり『やめないで』といってしまうステファ。当然、アルテは、嬉しそう
な顔で「まあ、承りましたわ☆」と喜々としてステファに覆い被さっていく。
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