【一階居間/14:30】


 ――『伝説のパン(****)』と、書いてあった。

「で、ん、せ、つ、の、ぱん……?」
 幼児のようにたどたどしい口調で、フィアはテーブルの上の小さな紙袋に記された文字
を読む。それが確かにシアリィの字であることはラスティが保証した。括弧の中に書かれ
た字は、小さい上に、かすれていて読みとることは不可能だ。
 しかし、そんなことは瑣末な問題。
 ラスティが、自宅であるパン屋の余りもの商品を詰めて持ってきたバスケット。餓えた
狼と化した探偵事務所の面々が、むさぼり食ったその下に――、バスケットの底に、それ
は静かに納まっていた。恐らく、中には小さなパンがひとつだけ入っているのだろう、紙
袋が。
「な、なんかすごそうですぅ〜」
 と頬を上気させてサーリアがいえば、アルテも、かたちの良い小鼻をひくつかせ、
「ええ、不思議な香りがしますね」
 と興味津々な様子。すると、まだ口に二食パン――ひとつのパンでチョコとカスタード
クリームのふたつを味わえるアレ――を咥えたままのステファが、みなを押しのけてバス
ケットの底を覗きこむ。もぐもぐ、ごくんと嚥下して、
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