ステファを筆頭に、探偵たちは対人マナーの教科書にでも載っていそうな、隙のない笑
顔を浮かべていた。しかし、その笑みはラスティを安心させるものではなく、逆に彼女に
得体の知れない不安を抱かせる。あはははは、と芝居じみた笑い声を発し、ステファが代
表して話しかけた。
「ま、まあまあ。そう焦っちゃダメだよー、ラスティ。ね? いー子だから」
 これ見よがしな猫なで声だ。
「え、で、でも……」
「このパンはね。あなたのお母さんが試食してほしくてこっそり入れたんだよ。きっと」
 ステファの推測に、ラスティは首を横にふる。
「だったら、わたしにいうはずです。おかーさん、黙ってそんなことはしないです」
「むむっ! あなたに、お母さんのなにがわかるっていうの!」
 勢いだけでたたみかけるステファ。少なくとも、おまえにはいわれたくない、と誰もが
思ったのではあるまいか。しかし、ラスティは、その『勢いだけ』のステファの剣幕に飲
まれて「あう、そ、それは……」と口ごもってしまう。
 そして、そのとき、アルテがラスティの腕からそっと手を引いた。
「落ちついてください、所長。怖がってるじゃありませんか」
 穏やかにたしなめるアルテに、ラスティはホッとした表情をつくる。けれどステファは、
がるるる、とうなってラスティに詰めよらんばかりの格好だ。その背中を、まあまあ、と
アルテが撫でている。ふたりの様子を見て、フィアはピンときた。
 ――こ、これは……。
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