【屋敷裏庭/16:00】
「……あぅ……」
ずいぶんと傾いた日差しを受けながら、ラスティはベンチに座っていた。噴水のそばの
ベンチだ。恐らくなにか――たとえば彫像のようなもの――が飾られていたのだろう噴水
中央の台座には、今はなにも載っていない。
ベンチに座って視線を前へ向けていれば、〃老いた〃という表現がふさわしい楓の大樹
が自然と目に入る。
――ラスティは、しばらく屋敷の外にいたほうがいーよ。
意図のわからないフィアの忠告に、その真剣さに押し切られた形で、ラスティは従って
いた。ベンチに座ったまま屋敷を眺める。年期のいった建物は、たしかに周辺の住民から
幽霊屋敷だ、などと噂されるのも頷けるものだ。
屋敷は、静かだった。堅牢な壁、きっちり閉じられたすべての窓。
ここからでは、物音ひとつ聞こえない。
「造花づくり、手伝わなくていいのかな……」
小さくつぶやく。その言葉が、現在の屋敷をとり巻く状況にどれだけそぐわないか、ラ
スティは察しようがない。いましも屋敷内では、〃伝説〃をめぐって死闘がくり広げられ
ていることなど――、
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