「所長だって?」とフィア。
「所長ですか?」とアルテ。
ふたりとも、なぜここでステファの名前が出てくるのかさっぱりな様子だ。当然だろう、
ステファは先刻までのポルターガイスト騒ぎの中でも、微動だにせずソファーで鼻提灯を
作っていたのだから。
「……………………」
フィアとアルテ、そしてなんとなくサーリアも、三人そろってソファーへと視線を向け
る。その刺すような視線を受けてか、ステファの愛らしい小鼻から生まれた鼻提灯が、ぱ
ちんっと弾け、次の瞬間、「ふがっ!?」と天使にあるまじき声をもらした。
ステファはがばりと立ちあがり、自信満々な顔で所員たちを見渡す。さらに、びしーっ
とひと差し指を突きつけ、
「そうよ、あなたたちに伝えておくことがあるわ! いいっ? 今回の、湯豆腐殺人事件
の犯人は、昨日、食べ残された冷や奴だったのよ! 豆腐ハンバークはアリとしても豆腐
ステーキはさすがにナシでしょ!! それは『焼き豆腐』!!」
と捲したてるなり、きゅう……、とゴムがこすれたような声をもらして再びソファーに
倒れこんだ。ぷくーっと鼻提灯がふくらむ。『で、所長がなんだって?』と顔に書いたフ
ィアとアルテにジトッと見られ、サーリアは頬を掻く。
|